判例検索のいま

弁護士の仕事において、判例検索はとても重要です。
適切な判例を検索し、的確に分析できるかどうかで訴訟の帰趨はほぼ決まります。
冷凍倉庫の固定資産税訴訟でも、実は、事前に有利な別の裁判例を知っていました。
ですから弁護士は、データベースサービスと契約し、複数の判例雑誌(判例時報・判例タイムズなど)を定期購読しているのが普通です。しかしそれでも、相談される事案にピッタリの裁判例を知っているとは限らず、日々、法令や判例を検索することになるのです。

CD-ROMで提供される判例検索システムが画期的だったのは30年ほど前ですが、たくさんの媒体をとっかえひっかえして、それでも思うような裁判例が見つからなくて、結局、夜更けに判例体系や実務書を読んで調べていたものです。
インターネットが普及し、判例検索はネットで行うのが当たり前になりましたが、キーワード検索だけでは適切な判例にたどり着けないことが多く、結局は各種の実務書などで事例に応じた裁判例にたどり着き、データベースは目的の判決全文を取得するために使う、ということが多かったのですが、ここに近時、革命が起こりました。
各種ライブラリサービスに生成AIを利用した検索機能が搭載されたのです。

判例検索システムは古くからありましたが、最近になって、実務書がPDF化され、ネット経由で読めるサービスが普及してきていました。これは、本の置いてある場所や時間に拘束されずに読める、という意味では画期的でしたが、一覧性では紙の媒体にはかなわず、普及のための課題だったと思います。
そこへ、生成AIを利用して、質問をベクトル化し、コサイン類似度の高い記事を示しつつ、それを参照した生成AIが出典を示しながら質問に対して答える、というRAGシステムが提供されるようになりました。
使ってみると、かなり的確で、圧倒的に便利だと実感しました。これによって、目的とする法令やガイドライン、判例に行き着くことが飛躍的に簡単になったといえます。必ずしも法律の専門書を揃えていない企業の総務部署などでは、特にそうでしょう。ほどなく、ライブラリサービスのAI検索は、法務における常識となるはずです。

しかし、ライブラリサービスには、収録範囲の限界があります。近い将来、判例情報も生成AIで検索できるようになると思われますが、すべての情報を網羅できるわけではないはずです。
他方で、インターネットの発達により、情報を収集することは飛躍的に簡単になりました。法令はe-GOVでXMLによって提供されますし、ガイドラインなどもいつでも省庁のHPで入手できます。それら収集可能な情報は膨大です。
ところが、あらためて自分の業務分野について見ると、倉庫業などについては、そこに焦点をしぼった法律の学者や実務家による解説書は、それほど存在していないのです。あらためて眺めると、そんな業務分野はたくさんありますし、ネットに乗せられないが事件を考える上で必要な情報は沢山あるのです。
このような状況で、膨大で、必ずしも整理し切れていない情報の中から、いま必要とする情報にたどり着くための「ラストワンマイル」を乗り越えるための技術が必要です。
それが、各種人工知能であり、さらには、各法律事務所が独自に開発するオンプレミスで稼働するLLMを活用したRAGシステムになるのではないか、そう考えています。

そうして今宵も、期待したようには動かない人工知能と格闘しながら、判例や文献を検索しています。

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